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リンダ・マリア・the after



 死ぬのも自由殺すのも自由、おまけにドラッグも自由だといい。
 もう何年もバンドをやってたおかげで、あたしの頭の中はディストーションノイズでギュウギュウ。お気に入りのカクテルをキメテ頭ん中をからっぽにして、目を閉じてまぶたに浮かび上がってくる景色を静かに見てるのが好き。
 仕事、ドラッグ、音楽、ドラッグ、喧嘩、ドラッグ、車、ドラッグ、ギター、ドラッグ、スマイル、ドラッグ、バンド、ドラッグ、電話、ドラッグ、人、ドラッグ、喧嘩、ドラッグ、馬鹿、ドラッグ、、、、、
 こんなことのくり返しから解放されて、あたしは愛するヤクだけと二人で静かな世界に閉じこもるの。ハッピーってこんな感じなん だと思う。ハッピー。

 隣の部屋でいやらしいホモビデオ、を見ていたオカマのリンダが、いい気分でソファに倒れてたあたしのところにやってきてバカなことを言い出したけど、あたしは全然気にならなかった。

 リンダはミクが先週連れてきたコ。どっかのバーで拾ったんだと思う。ヒスローがひどく嫌ってる。嫌ってるというより嫌悪って 感じ。オカマなのに此処でヒスローに好かれなくて残念だろうけど、ミクに散々虐められて喜んでるところをみると、オシリをやっ てくれるんなら誰でもいいみたい。種類は違うけど、そうゆう態度はよろしいんじゃない?中毒者としては。

 「ねえ、オシリのネックレスを引っ張ってくださらない?」
 
 あたしはまぶたの裏のハッピーな景色から離れらんなくて、目を閉じたままリンダの声を聞いていた。

 「いやよ。あんたのホモ友達にでもやってもらいなさいよ。それともミクが帰ってくるのを待ったら?」

 目を閉じた目の前には、きれいな蓮の花がたくさん咲いていた。あたしはその中に浮かんで本当にいい気分だった。
 目を開けてリンダのオシリどころか、リンダの汚い顔の化粧を見るわけにもいかなかった。

 「残りをもらってもいいかしら?」
 いい気分のあたしは、オウケイした。リンダは最初からこっちを頼みたかったんじゃないかな。とにかくもう外側のことなんてどうでもいい。

 あたしは目を開ける気にならなかったから、蓮の花の上で部屋の中の音だけ聞いていた。リンダがライターをつける音がした。しばらくしてリンダが窓を開ける音がした。
 極彩色に囲まれてあたしは溶けてくチョコレートみたいな気分を味わっていた。こうしてノイジーな音楽から解放されて、ふんわり目を閉じてると本当にハッピー。
 

「気持ちいい。死んでるみたい」
リンダの声がした。
 

「ミクがしばらく帰らないって言ってたわ」
リンダの声は泣いているように聞こえた。

 きっと、飽きただけなんだろう。ミクなら放っときゃすぐ帰ってくる。だけどミクが帰ってきた時にまだ部屋に居たりしたら、リンダはきっと酷い目にあわされるだろう。ミクときたら、醒めてしまった相手には本当に別人みたいに態度を変える。ちゃめちゃにりつけて、ポケットの小銭から、カードから洋服まで全部取り上げて、丸裸で外にだしたりする。今までの場合、ミクとのつきあいの長さによって、そうされた相手の態度もそれぞれ。ミクはだいたい1週間で相手を変える。1ヶ月続く時もあるけど、そうゆう時は別にもう一人相手がいたりする。
 ほとんどの場合は、しばらくドアのところで呼び鈴を鳴らしたあと、応答がないのに諦めてどこかへ消えていく。だいたい裸にされて、どうやってどこに行くのか、あたしにはわからないけど、とにかく、ミクは散々怒り狂って、かつての恋人を外に放り出し、巻き上げたお金を持ってすぐに窓から出ていく。あたしはしばらくの間鳴り続ける呼び鈴の音や、「みく!みく!開けてよ!」なんて言ってる、哀れな声を聞きながら、クスリの用意をしたりしている。
 今までに3人、裸のまま警察にかけこんだマヌケがいた。麻布警察から警官がドアのところまでやってきて、面倒くさそうに「けいさつで〜〜す。あけてくださ〜〜い」なんて言っていた。ミクはとっくに窓からでて、どこかへ消えてるし、しかたなくあたしが警官と喧嘩したり、追い返したりしなくちゃなんないこともあった。
 警察!警察なんて部屋に来られちゃ困るのだ。馬鹿の集団!あの制服を見るだけでも寒気がして吐きそうになる。馬鹿で役に立たない警察に裸で駆け込む奴もすごい馬鹿だと思うけど。
 ミクのやり方もいい加減変えてくれないと、この部屋は大変なことになる。
 とにかく、ミクは一度飽きてしまった恋人には情け容赦ない、奪うだけ奪ってどこかへ消えてしまう。

 「ミクは愛してるって言ってくれたのよ」
 リンダはまだ泣いていた。
 誰かの話なんて聞いてられる状態じゃなかったけど、あたしは出来る限り気遣ってみようと試みた。このマンションの治安の為にもすみやかに問題は解決されるべきなのだ。

 「ずっと一緒に暮らそうって言ってくれたの。愛してるって」
 先週にはミクもそう言ったのかもしれない。だけど、アイシテルなんてベッドに行こうっていうサインみたいなものかもしれないし、あたしにはわかんない。ゴメンナサイのかわりに言ってみたりしたことは、ある。
 あたしのリンダへの同情はこれ以上続きそうになかった。なにしろ、さっきから窓から吹いてくる風の音がすごい。風が頬に触れる感触も感じすぎるくらい感じる。神経細胞がどんどん伸びていく感じ。通りの向こう側の、ビルの地下にあるバーでたった今誰かがついたため息まで頬に触れる。

 リンダのため息が聞こえた。
 あまりに近かったのでキマってるあたしにはものすごい爆風に感じるくらいだった。

 「ねえ、ネックレス、とってあげるよ」目を開けた。リンダの顔が見えた。彼女はひどい顔で泣いていた。
 「うつ伏せになってこっちにおしりむけて」化粧の崩れたリンダの顔が見てらんなくって、あたしはすぐにそう言った。

 リンダは戸惑った様子で、涙を拭ったり、スカートの裾を持ったり、あたしのほうを見たりした。
 こっち見たりなんてしなくていいのに。男でもない、女でもない、大抵の人は見なれなくてギョッとするあのシリコンバッグの胸と陰茎のついたからだを、黙って抱いてくれる相手を探しているだけなら、あたしが一回おもちゃにして、ミクに内緒にして あげるとかなんとか言って、適当なケイタイの番号でも渡して、今日中にこの部屋から追い出したほうが、帰ってきたミクが怒り狂って、部屋の中で暴れなくてすむだろうと思っただけのこと。また警察なんてくることになったら面倒なのだ。このコだって身ぐるみ剥がされて追い出されるよりマシだろうし、おしりからネックレスを引っ張るくらいならあたしだって10秒でできる。たぶん。
 目があうとリンダはまた泣き出した。
 あたしは、しかたなくソファから起き上がって、リンダに優しいセリフでもかけてあげようと口を開いた。と、同時にリンダが言った。

 「わたし、ミクを待つわ、それまでおしりは痛くても我慢する」

 「そう、勝手にしたら。ミクは戻ってこないわよ」

 リンダはさらに激しく泣いた。

 たった一週間の恋のためにもこの哀れなオカマちゃんは泣いたりするんだ。

 そんな気持ち。

 そんな気持ちってどんな気持ちだったっけ。

 あたしはリンダと一緒に泣いていた。
 



 

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