入院っていうと、いいイメージが浮かばなくて。
いや、誰だってそうかもしれないけど、入院はどこか調子が悪くなってするんだから
は入院っていうと精神病院しかしたことがないんだけど、それだってなかなか楽しいところじゃなかった。

保護室なんていやだよね。
真っ白い壁、右も左も上も下も真っ白。窓がなくて、ぐるりと檻に囲まれて、
部屋の隅にトイレがあって、
床にうすっぺらなふとんを敷いて寝るんだけど。
まぁ、することないから、寝てるか、壁を見てるしかないんだけど。
トイレなんて、水が流せないようになってるんだよ。
すませたら、大きな声で「すいませーーん、水流してくださーーい」て叫ぶか、
人が通りかかった時に頼むんだ。そうしたら、水が流れる。
これはたぶん、水で自殺したりしないために。

閉鎖病棟もあれだけ空間だものね。鉄格子はまった窓の外じーーっと見てるしかないんだよね。
ちっちゃい声で歌ったりしながら。
社会を、社会のすみっこの鉄格子の中から眺めながら。
この中も自殺しないためにいろんな工夫がされていた。
そんなふうにして死なないようにするのってなんのためなんだろ。

一生はいってなさいって言われたんだ。あんなところに。
未成年だし、まだ義務教育もあったから、数カ月でひとつの病院からだされると、
また別の病院にいれられるんだ。それを繰返して、もうださないって言われた。

そんなふうに強制的に、両腕つかまれて、入院させられてばかりだから、
それ以外のことはわからないけど
精神病院に入院することって、なんなんだろう?
閉じ込められてることでなにがよくなるのかな?
大人用のおむつされて、ベッドにしばられて、幼児語で話しかけられて
傷つきすぎてどんな顔していいのかわからなかったよ。

今も夢をみる。
僕は病院のベッドにしばりつけられていて、窓には鉄格子がはまっている。
くる日もくる日も僕はどこにも行けない。
同じ時間に看護士さんがやってきて、血圧を計る。
隣からは叫び声が一日中聞こえる。
外にでたい!僕はやりたいこといっぱいあるんだ。会いたい人だっていっぱいいるんだ。
僕は15才だ!このまま病院で成人したくない!
そこで目が覚める。
自分の部屋で寝ていることに気がついてほっとする。
冷や汗をびっしょりかいている。
こんなことの繰返し。
僕にとって、入院は恐いことだったと思う。

ねぇ、僕は、人の心と心はつながってるものだと思うんだ。
プラスティックのオブジェをふたつ近づけても、ぶつかりあうだけだけど
心が近くに寄るとさ、混ざりあうっていうか、溶け合うことができると思うんだよね。
だって、誰かが悲しい時は、こっちまで悲しくなっちゃったりするでしょう?
誰かが喜んでると、僕も嬉しくなったりね。ね、するよね?

だから、そんなふうに、実は、
心の病気や、不安定な精神状態も、うつるものじゃないかなって思うんだけど。

伝染病を隔離するみたいに、僕も、隔離されているべきだったのかな。って。

それが、一生ださないと言われた、僕の入院の意味だったのかなって。

今じゃあ、いつもいつも自分が正常か、正常にみえているか気になるようになっちゃった。
毎週の院長回診で、それをやってたからね。

正常か正常でないか、正しいのか正しくないのか、
そんなことのこたえをだせないいまま、からまったまま、歌う。
ライブで、目の前にいる、すぐそこにいる誰かに、僕は一体
殴りかかっているのか、くちづけをしているのかも
わからないまま歌う。

でも行きたい場所があるとわかってる。

自分のからだがなくなって、顔がなくなって、心臓がなくなって、
なんにもなくなって、なくなって、忘れたい。
忘れて忘れて最初からなにもなかったくらい忘れて
僕がうまれたってこともなくなって、なくなって、なくなる場所。