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多重人格障害の治療についての解説なんだけど、
難しくみえるけど、読んでみるとすごくわかりやすいので

治療を受ける人

これからの人も、

ぜんぜん治療に縁のない人も、

理解を深めるためにぜひ読んで欲しいです

所々でマリア達の経験にリンクされてるところも
解説全体を読んでから読むとわかりやすいです


 
 
 
 

多重人格障害


多重人格障害(MPD)の治療についてBraun,B.G.にしたがい13段階にわけて解説した。
MPD患者は小児期の持続的な心的外傷体験の生存者である。
治療の中心はそれぞれの人格の外傷体験の消化を除反応を行う精神療法である。
アクティングアウト対策のため契約書による限界設定が必要である。
治療社者が媒体となって人格相互のコミュニケーションを促進することで、複数の人格・統合に向かう。

精神科治療学 10(臨);166-169、1995


1.はじめに

多重人格障害(MPD)は北米には多数の報告がある。(一説には精神科入院患者の0.5%〜2%、全精神患者の5%という)現在の米国の診断基準DSM-IVでは解離制同一性障害(DID:Dissociative Identity Disorder)と呼ばれる。日本ではまれな疾患であるとされる。
 

2.診断

確定診断のためには、臨床家が別の人格(交代人格  alter personality)と直接出会う必要がある。その手順は臨床家が患者に依頼することである。たとえば、患者の記憶にない行為について「先週の水曜日、〜を買ったことを記憶しているあなたの部分を直接話がしたい」と告げる。催眠やアミタールはこの過程を促進する。
だが、初診から交代人格に出会えることは珍しいため、臨床家は様々な随伴症状からMPDを疑わなくてはならない。MPDを疑う指標を示す。(表1)その他に、診断ツールとして解離体験尺度(DES:Dissociation Experience Scale)という質問紙や解離性人格障害面接スケジュール(DDIS:Dissociation Disorder Interview Schedule)という構造化面接が考慮されている。
 
 

表1 MPDを疑わせる徴候



1. 性的虐待そして/あるいは身体的虐待の病歴
2. 女性
3. 記憶に欠落がある
5. 頭の中に声がする。あるいはシュナイダーの一級症状
6. DSM-。-Rの境界性人格障害の診断基準を満たす、あるいはほとんど満たす
7. 過去の治療が成功していない
8. 自己破壊的行為
9. 思考障害はない
10.頭痛


Ross,C.A.:MUltiple Personality Disorder:Diagnosis,clinical features and treatment.John Wiley&Sons,NewYork.1989り引用
 

3.治療

治療の諸段階

MPDの病因は現在のところ不明であるが、大多数の症例に小児期の心的外傷(とくに性的/身体的虐待)の概往が報告されている。MPDの治療は成人した児童虐待の生存者に対する治療と基本的には同じであり、精神治療が中心である。以下、Braun,B.D.)にしたがって治療を13段階に分け、それぞれを説明する。

1)信頼関係を築く:MPD患者にとって「信頼」は格別に重要な意味を持っている。彼らは、治療者が信頼に足る人物かどうか、自分の訴えを真剣に聞いてくれるかどうか、つねにテストする。それはしばしば患者が治療者をコントロールするという形を取る。治療者は患者の症状に振り回されると感じる。だが治療者がその訴えを無視すると、患者は拒絶されたと感じる。患者は拒絶に敏感であり、拒絶されていない時でさえ、拒絶されたと感じることがある。

2)診断を共有する:MPDの診断が確定したら、診断を患者に告げる。診断はすぐには受け入れられないが、診断の是非を巡って患者と論争すべきではない。MPDが小児期の心的外傷による病気であること、治療の目標は交代人格の統合であることを治療者は患者に説明する。

3)それぞれの交代人格と交信する:交代人格の平均数は13〜15と報告されている。治療者は治療の進展と共に新しい人格と知り合っていき、最終的には全ての人格と交信しなければ鳴らない。
 人格には各々特徴があるが、治療者は全ての人格を平等に扱わなくてはならない。ひいきの人格や嫌いな人格をつくらない。また、隠れた人格が治療者の言動を見ている可能性を常に念頭に置くべきである。
 各人格は区別し尊重する必要があるが、人格を独立した人間とみなしてはならない。全ての人格が全体として一つのまとまり(システム)をなしている。治療者はこのメッセージを患者に対して送り続ける必要がある。

4)契約する:患者は自殺企図、自傷行為、暴力などさまざまなアクティングアウトを引き起こす。治療の進展の為に必ず限界設定を行う。最も有効な限界設定は書面による治療契約である。最低限、契約書に記載すべきことは、
a)患者の身体の安全
b)治療者の安全
c)治療者の私生活の保全d)治療者の所有物の安全
e)他の人格の所有物の安全、などである。
 患者は信頼すべきはずの養育者から虐待された人達である。彼らは家庭の不文律にダブルバインド的に従わされてきた。明文化された契約は彼らを安心させる。契約を守ることは、彼らとの信頼関係を強めることである。禁止事項だけでなく、面接時感などもきめておく方が良い。Putnam,F.W.は週2回(1回90分)の面接を奨励している。

5)病歴を収集する:各々の人格から以下の五点を中心に聞く。
a)who-----人格の名前。
b)when-----人格はいつ生まれたか。身体のコントロールができるようになったのはいつ頃からか。
c)why-----人格はなぜ生まれ、なぜこの時点で出現するのか。
d)where-----人格が誕生した時どこにいたか。おのおのの人格は人格システムのどこに位置するのか。
e)what-----人格はどう言う役割を果たしているか。主な人格の類型は表3を参照。
 
 

表3 交代人格の類型


ホスト人格
子供人格
迫害者人格
自殺者人格
供護者ないし救済者人格
内部の自己救済者
記録人格
異性人格
性的放縦人格
管理者人格および強迫的人格
薬物乱用者
自閉的人格および身体的障害のある人格
特種な才能や技術を持つ人格
麻酔的ないし麻痺的人格
模倣者および詐欺師
悪魔と精霊
オリジナル人格


Putonam,F.W.:Diagnosis&Treatment of Multiple Personality Disorder.The Guilford Press,New York,1989より引用
 

6)各々の人格が持つ問題を取り上げていく:各々の人格は異なった生活史を症状を持っている。面接のテーマはしだいに過去の外傷体験に向かう。外傷体験の記憶は失われていたり、秘密にされていたりする。過去の外傷体験が想起されると生々しい感情が今ここでのことのように再現される。これは除反応(abreaction)と呼ばれる過程である。うまくいった除反応はその人格の症状を軽くする。全人格の記憶を集めて初めて患者の病歴の全貌が明かとなる。
 
 

7)特殊な療法を用いる:Braun,B.G.は5つの療法を挙げている。

a)マッピング-----患者もしくは治療者によって人格システムを図解する。これは有益な治療指針となる。

b)箱庭療法-----とくに子供の人格の表現手段として有効である。

c)保護室の使用-----安全なやり方で感情表現(絶叫など)を促進することができる。

d)作業療法(芸術療法)-----患者は感情を非言語的に表現することができる。それは隠された外傷体験を知るヒントになる。

e)催眠療法-----治療者が交代人格に会うことを容易にする。

8)人格相互のコミュニケーションを促進する:各々の人格は解離障壁によって隔てられており、互いの人格は全く相手を知らなかったり、一方的に知っていたり、様々である。治療者は媒体となって各々の人格同士を認知させ、相互のコミュニケーションを促進する。治療者は人格達に日記や掲示板を共有するようにすすめる。人格達はノート上や掲示板上でメッセージを交換する。次に、頭の中で他の人格に呼びかけるように勧める。徐々に人格同士が内言語で会話できるようになる。そのうちにお互いの姿が精神内界に心像として「見える」ようになる。この過程が進むと人格間の解離障壁は崩れていき、人格達は融合しやすくなる。

9)融合/統合を達成する:治療が進むと人格達は分離している必要が薄れてくる。融合(fusion) は複数の人格が一つになることである。各々の人格の合意を得た後、催眠もしくは暗示によって融合をすすめる。融合は、各々の人格が生まれてきた系図に沿って行うべきである。つまり人格の分離と逆の道筋を辿るべきである。最終的な融合は人格を唯一にする統合(intergration)である。

10)新しい行動様式と対処技術を身につける:統合した新しい人格はまだ弱いので、安全な環境で少しずつ活動を広げていく必要がある。治療者は患者を支持する。

11)社会的なサポートシステムを利用し、ネットワーク作りをする:患者の対処技術を向上させるためには、個人精神療法だけでは十分ではない。また治療者が「燃え尽き」ないためにも地域のサポートシステムを利用するのがよい。患者が結婚していたり子供がいたりする場合には、夫婦カウンセリングや児童精神保険の専門家の介入が有効である。さまざまな自助グループ(A.A,アラノン,〜の親の会など)も助けになる。

12)獲得した者を強化する:患者は対処技術をさらに洗練し、自立していく。

13)フォローアップ:統合が達成された後の長期フォローアップでは、交代人格が出現していないかどうかを催眠を用いて調べる。交代人格が認められたら、治療を開始する。
 
 

2入院治療について

入院は患者の行動を制限しプライヴァシーを奪う。虐待の生存者である患者には入院という環境事態がかつての虐待を彷佛させるものである。またMPD患者は他の入院患者よりも多くの労力を必要とし、いろいろな意味で「特別扱い」となる。そのことは一部の病棟スタッフの反感を買う。「特別扱い」となることは治療者のせいでも患者のせいでもなく、障害の性質上しかたのないことである。入院に際しては以下の点に注意すべきである。
1)必ず治療に関する契約書をかわす。
2)可能な限り個室を使用する。
3)MPDの診断を病棟スタッフに早期に知らせる。
4)起こりうる事態について病棟スタッフにあらかじめ説明する。(たとえば、MPD患者は様々なアクティングアウトを引き起こし、スタッフの内部に敵と味方をつくってスタッフを分裂させる。)
5)治療者は患者をの約束や病棟の規則について責任を持つ。
 
 

3薬物療法について

抗精神病薬は禁忌である。抗鬱薬は有効な場合があるが、自殺目的の大量服役に注意すべきである。抗不安薬は有効であるが、時に大量使用を余儀なくされるため、常に依存形成を注意すべきである。大量使用の場合は、肝臓に対する影響を考え、肝臓で代謝されないlorazepamを用いるべきである。
 患者は執拗な不眠に悩まされることが多い。これは外傷体験が入眠時に恐怖や幻覚となって侵入し、睡眠中には悪夢となって、患者の安眠をさまたげるからである。薬物で完全に不眠を解消することは出来ない。統合が達成されるまで不眠は続く
 
 

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